女性の育児休業は、産後休業後から子どもが1歳~1歳6ヶ月に達するまでの取得が一般的な考え方のようですが、早く復職したいという本人の意向や、保育園へ入園しやすい時期を考慮した結果、職場側の人手不足など、様々な要因で子どもが1歳に達する前に職場復帰する女性従業員も多くいらっしゃいます。
実際、「母乳育児」と「仕事」の両立を希望する母親は増加しており、厚生労働省が10年ごとに行う「乳幼児栄養調査」によると2015年度、出産後1年未満に復職した母親で主に母乳を与えていた割合(生後3か月時点)は約49%と、2005年度の約27%から大幅に増えています。
そのような中、厚生労働省から「職場に「搾乳室」を作りましょう!」というリーフレットが公開されました。
子どもが1歳に満たない状態での復職だけでなく、1歳半を過ぎていても離乳食と並行して夜間授乳を続けている方や、お子さんの成長具合や家庭の考え方によっては2歳で授乳を続けている方もいて、これらに該当する方は皆、お子さんと離れ仕事に従事している間も、体は母乳を作り続けているために「マザーズルーム(搾乳室)」が必要となります。保育園へ預けることを見越して、早めに断乳・卒乳をした方も多く存在しますが、そういった方たちも例外ではありません。
なぜなら、断乳したとしてもいきなり母乳が止まる訳ではないからです。赤ちゃんに母乳を与えることをやめても、しばらくの間、母乳は作られ続けます。そのため母乳が溜まって乳房が張り、場合によっては、乳腺炎や乳腺潰瘍などの乳房の病気のリスクが高まる可能性があります。また、乳管が詰まってしこりが残り、そのしこりが炎症を起こすこともあります。それを回避するために必要なのが「搾乳」です。
日中の長い時間を過ごすオフィスにおいて、衛生的で他人に見られず安心して搾乳できるスペース=「マザーズルーム(搾乳室)」があること、それが「女性従業員が安心して職場復帰できる非常に重要なポイント」となるのです。
教員不足が大きな問題となっている教育現場では、育児休業から復帰した女性教員を支援するため、搾乳ができる「マザーズルーム(搾乳室)」の設置費用を自治体に補助し、効果を検証する事業を試験的に行うという試みも始まっています。
読売新聞:女性教員復帰へ公立校に搾乳室…「職場のトイレで搾乳、少なくない」
労働基準法では、1歳未満の子どもを育てる女性に「1日2回、各30分」の育児時間の取得を認めています。
こうしたことの認知拡大・徹底も重要になってくると思います。
また、「マザーズルーム(搾乳室)」を設置する大学や民間企業も増えつつあります。
早稲田大学では、教職員からの相談をきっかけに、15年ほど前に搾乳や授乳ができる部屋を導入しています。また、東京大学や香川大学などが同様の部屋を設けています。
三井不動産では、2019年に本社に搾乳スペースを2か所設置しています。
女性の活躍をさらに進めたいと考える企業では、重要で貴重な戦力である女性の早めの職場復帰を促すためにも、また、これから入社を考えている若い世代の女性に「育休後の職場復帰のことまでケアしてくれる企業なら、長く勤められる」と選ばれる企業になるためにも、「マザーズルーム(搾乳室)」の導入を真剣に考える時代がやってきているのではないでしょうか。
この記事を書いた人

- 子育て経験を活かして設置型授乳ブース「Babypeko®」の導入支援を行っているGREATEST DAY株式会社の代表取締役CEOです。ママ目線から授乳室事情や子育て、女性の働き方などについて綴っています。GREATEST DAY株式会社代表取締役CEO/授乳・キッズスペースコーディネーター
最新の投稿
ニュース・話題2025年3月14日職場に「マザーズルーム(搾乳室)」を作りましょう!
その他2024年8月7日ベビーカーにまつわる常識の変化と世代間のギャップ(その3)
その他2024年8月7日ベビーカーにまつわる常識の変化と世代間のギャップ(その2)
その他2024年8月7日ベビーカーにまつわる常識の変化と世代間のギャップ(その1)