わたし、もしかして乳がん?

乳腺炎と診断されたが、実は進行の早い炎症性乳がんだった。
そんな恐ろしい話があることをご存じでしょうか。
乳腺炎の症状と炎症性乳がんの症状は似ており、残念ながら誤診も起こり得ます。

前回記事では、授乳室が見当たらず、やむを得ず施設のトイレで搾乳したお話を書かせていただきましたが、今回は、筆者が「一度死んだ」お話をさせていただきます。

突然の悪寒戦慄、高熱、左胸の激痛。

産後2ヶ月目、料理をしていたときのこと。
今さっきまで元気モリモリで豚足を煮込んでいたのに、突然激しい悪寒に襲われた。
(また、悪寒戦慄か…)と察し、ガタガタと震えながら寝室へ移動。冷房はつけず、厚手の長袖を着て、羽毛布団にくるまった。ちなみにこれ、8月末の出来事。
悪寒戦慄は産後にもなりやすいと言われているが、この2ヶ月間でなんと4回目。今回は胸の痛みもあったため、授乳期の乳腺炎を疑った。
水分をとり布団にくるまっていると、体温は39.9℃に。発熱がピークに達した段階でカロナールを飲み、数時間後にタクシーで受診した。夫よ、子ども2人を頼んだ…!

医療機関を受診。乳腺炎ではなかった。

胸が痛いわりに張ってないし、授乳量も大きく減ってない。うっ滞性の乳腺炎ではなさそうだ。授乳期だから乳腺が痛むことはあるけど、それにしても今までにない激痛と熱感。大きな傷は見当たらないし分泌物も変わりないけど、化膿性の乳腺炎なのか…?

そう思いながら受診した結果、「乳腺炎ではなさそうですね。原因はわかりませんが。うちでは乳がんの検査はやってないんですよ。念のため抗生剤だけ出しておきますね」とのこと。
十中八九乳腺炎だと思っていたから、拍子抜けした。いや、緊張が増したというほうが正しい。というのも、乳がんの家族歴がある。

しこりはないし、見た目も異常はないけど、もし乳がんだったらどうしよう。一般的には、乳がんの初期症状で痛みを訴える人は少ない。それは知っている。ただ、珍しいケースに自分が当たることもある。
家族歴もあることだし、産後落ち着いたら乳がん検診を受けようと思っていた矢先にだ。大丈夫だとは思うが、こういうのは最悪のケースを想定しておいたほうが後が楽になる。高熱で普段より悲観的になっていたのも相まって、帰宅してから静かに泣いた。顔を見られないようマスクをつけていたのに、気付いた長女が不思議そうに眺めていた。

翌日、別の医療機関を再受診。結果は…

解熱剤と抗生剤が効いたようで、翌日には症状がおさまり始めていた。昨日とは別の、乳腺外科のあるクリニックで触診とエコー検査をしてもらったところ、「乳腺炎でも乳がんでもなさそうですね。原因はわかりませんが」とのこと。
今度こそ拍子抜けした。乳腺炎じゃないのか。じゃあなんだったんだ、あの高熱と激痛は。と思ったが、きっと疲れてるんだろう。そう思うことにした。

ここで冒頭の問いに戻るのだが、残念ながら医療は「ゼッタイ」はない。誤診だって起こり得る。自分が医療者だから、なおのことわかっているつもりだ。失礼だとは思いつつも、「すみません、先生。家族歴もあるので細かく診ていただきたいんですけど、今のところ自信を持って問題ないと断言できそうですか」と念を押した。
やれやれといった感じで「だい…じょうぶですよ。もし心配でしたら、産後1年経ったら検診受けに来てください」と。ごめんなさいね、先生。ひとまず安心できた。

先生が「産後1年」と言ったのは、授乳期は乳腺が発達しており、マンモグラフィ検査(乳房のレントゲン)を受けても正確に診断できないからだ。エコー検査はこの時期でも受けられますが、もし心配な方は妊娠前にマンモグラフィ検査を受けておくとなお安心です。

「一度死んだ」わたし

最悪のケースまで考えていたから、一度死んで生き返ったような気分。
もし乳がんと診断されていたら、「もっと早くに検診を受けておけばよかった」「もっと自分の身体を労わってあげればよかった」と、悔いていたことでしょう。
その状況になって、運よく病気になる前にタイムリープすることができて、それが今この瞬間だとしたら。そう考えると、おのずと行動は変わってくる。

これから毎年、必ず乳がん検診を受けます。検診を受けないという選択肢もある中で、筆者は受けることで得られる恩恵のほうが大きいと考えているので、受けます。食事と運動は、なるべく健康的にと心掛けます。なるべく。

でも人間って、そううまくはできてないんですよね。つい先日、南海トラフ地震のニュースでもちきりになっていた時には、防災関連の動画を見漁っていましたが、今はさっぱりです。毎日そんなことばかり考えていると、身がもたないんですよね。

乳がん検診を受けようと思いつつも、つい先延ばしにしている方。いらっしゃいませんか。この記事は、そんな皆さまと、検診を怠ってしまうかもしれない未来の自分への、備忘録とさせていただきます。


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この記事を書いた人

葉山つむぎ
葉山つむぎ
看護師・保健師として、精神神経科救急病棟と精神科訪問看護を経験。子どもが幼いうちは在宅ワークに切り替えたいと考え、一旦看護師を退職する。
現在は2児の自宅保育をしながら、web・コピーライティング、画像制作、相談業務、看護学生・看護師の学習支援などを行っている。
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